観光地として人気のある上高地ですが、山岳景勝地と呼ばれていることから想像できるようにかなり標高が高い位置にあります。そして、標高が高いと心配になるのが高山病です。
この記事では、
- 上高地の標高はどのくらいなのか
- 上高地で高山病になる心配はあるのか
について解説をしています。上高地の標高や上高地で高山病にかかるかについて気になっている方は参考にしてください。
上高地の標高は約1,500m
すぐ近くに穂高の山々がそびえており、それらの山の頂を見上げるような場所に上高地は広がっています。そのためか、それほど標高があると思っていない人が多いようですが、上高地(大正池〜小梨平)は約1,500mほどの標高があります。
1,500mと言えば立派な中級山岳と言える標高です。上高地は、バスやタクシーを使って簡単に訪れることができるため、上高地自体が「山」であると思っている人は意外に少ないようです。
中級山岳とは、標高が1,000m〜2,500m、あるいは1,500m〜2,500mの山のことを指すことが多いです。
各地点の標高
国土地理院のウェブ地図「地理院地図」で調べた結果を表にすると、上高地内の標高は次のようになっています。
地名 | 標高(m) |
---|---|
大正池(池のほとり) | 1,490m |
田代池 | 1,491m |
ウェストン碑前 | 1,499m |
河童橋 | 1,504m |
小梨平 | 1,505m |
大正池から小梨平まで遊歩道を歩いて行くと、約3.9kmの距離(直線距離なら約2.8km)ですが、このあいだにわずか15mしか標高は上がっていません。計算すると100mあたり38cm上がっていることになります。
山岳地ではありますが、上高地がいかに平らであるかが分かると思います。別の言い方をすれば、山岳地並みの標高なのにとても歩きやすいところであると言えると思います。
小梨平から先、奥上高地とも呼ばれる横尾までの標高は次のようになっています。
地点 | 標高(m) |
---|---|
小梨平 | 1,505m |
明神(明神館前) | 1,527m |
徳沢(徳沢園前) | 1,560m |
横尾(横尾大橋前) | 1,617m |
明神を過ぎると徐々に標高の上がり方が急になっていき、横尾では1,600mを越えます。最後の徳沢から横尾までは約3.5kmありますので、この区間は100mあたり1m63cm上がっていることになります。
1m63cmは小梨平までの38cmと比べると4倍以上も上がり方が急になっています。これは「本格的な山、つまり北アルプスの山々に近づいた」ということなんですね。実際に、徳沢より奥は観光客よりも登山者の方が目立つようになってきますので、登山者の領域に入ったと言っても良いかもしれません。
標高と気温
下は、上高地と松本市の月ごとの平均気温を表にしたものです(赤字は最高気温、青字は最低気温です)。
月 | 上高地(℃) | 松本市(℃) |
---|---|---|
1月 | -2 / -8 | 5 / -6 |
2月 | -1 / -7 | 6 / -6 |
3月 | 4 / -3 | 11 / -2 |
4月 | 11 / 4 | 18 / 3 |
5月 | 16 / 10 | 23 / 9 |
6月 | 19 / 14 | 26 / 15 |
7月 | 23 / 17 | 30 / 19 |
8月 | 24 / 18 | 31 / 20 |
9月 | 18 / 13 | 26 / 15 |
10月 | 12 / 6 | 19 / 8 |
11月 | 6 / 0 | 14 / 1 |
12月 | 1 / -5 | 8 / -4 |
どの月も、最高気温を比較すると上高地と松本市の間で 7〜8℃の気温差があります。上高地の方がずっと涼しいことが分かります。
国際標準大気では、気温は100m上がるごとに約0.65℃下がると定義されています。
上高地の標高が1,500m,松本市の標高が592m(市役所の位置)であることから、計算上は約5.9℃下がることになりますから、ほぼ計算どおりと言えるでしょう。
8月、うだるような暑さの中、松本市内から上高地に入ると、まるで別天地のような涼しさ過ごしやすさを感じるのは、この標高差のおかげなんですね。
国際標準大気とは、国連の専門機関のひとつである ICAO が定めた世界標準の大気状態です。
上高地で高山病になる人はほとんどいない?
おそらく、上高地を訪れる人のほとんどが上高地で高山病になることはない、と思われます。その根拠の一つは、上高地でネイチャーガイドを行っているファイブセンスのブログに書かれていた内容です。
普通に過ごしていて空気が薄く感じるほどではありませんが、上高地で13年過ごして今までに2人、高山病のような症状が出るという方に会ったことがあります。
引用:標高1500mあれこれ
ひとシーズンにどのくらいの人数をガイドされているかは分かりませんが、13年で2人ですので、かなり確率としては低いと思いいます。
別の根拠をあげます。
恩賜財団済生会のサイトには次のようなことが書かれています。
個人差はありますが、標高が2000~2500mを超えると、高山病になる可能性があります。日本国内でいえば、富士山や南アルプス、北アルプスなどの山が3000m級なので、特に注意が必要です。
引用: 高山病にご用心
もう一つ、山岳医療救助機構から引用します。
一般に高山病は標高2,000m以上、多くは2,500m以上で発症します。
引用: 高山病とは
どちらも信頼のおけるサイトですが、高山病は2,000m以上で発症すると書かれています。
このことからも、標高1,500mの上高地で高山病にかかることは、かなり少ないと言えるのではないでしょうか。
もちろん、「個人差はありますが」「一般に」と断りがあるように、絶対に高山病にかからないということではありません。
高山病と気圧
高山病は、標高が高くなり気圧が下がることによって、私たちが体に取り込める酸素の量が減り、血液中の酸素濃度が下がることによって起こります。
気圧が下がると空気の密度が低くなり、空気の量が減ります。空気の量が減るということは、酸素の量も減ることになりますので、体に取り込める酸素の量も減ってしまいます。その結果、血液中の酸素濃度が下がり高山病になる、という訳です。
ちなみに、高山病を発症するとされる2,000mの気圧は802hpaです。これは平地(標高0m)の1013hpaの約4/5(80%)にあたります(上高地の標高1,500mは851hpa)。
それは高山病?
高山病の症状としては、
などがありますが、これらの症状は高山病以外の原因でも発生することは、みなさんもよく知っていると思います。
- 上高地に行く前日まで残業続きだった
- 憧れの上高地に行けるので興奮してよく眠れなかった
- 上高地内をあちこちがんばって歩きすぎた
- 散策中に雨に降られ体がかなり濡れてしまった
こんなことがあれば、頭痛がしたり、だるさ・眠気を感じたりすることもあるでしょう。もちろん、高山病を発症している可能性もあります。
外から見た症状だけで高山病かどうかを確実に見極める方法はありません。
十分に休息をとっても症状が改善しない、あるいは症状が悪くなっていくように感じるときは、迷うことなく診療所(上高地診療所)に行ってください。高山病ではないかもしれませんが、大事を取ることに越したことはありません。
上高地診療所は東京医科大学が上高地のシーズン中(4/27〜11/15)に上高地内に開設している診療所です。保険診療も受けられますので、上高地に出かける際はもしものために保険証を持っていくことをおすすめします。
まとめ
本記事では、上高地の標高、および上高地の標高(1,500m)で高山病にかかるか、について解説しました。
私は、上高地で高山病にかかったことはありませんが、初めて奥穂高岳に登ったときに高山病にかかりました。
穂高岳山荘で食欲が出ず、さらにだるさも感じていたのですが、翌朝には全快していました (^^ そのような症状が出たのは最初の一回だけです。
標高3,000mに近くなると頭痛が出るという友人もいます。翌日には治るそうですが、日にちをあけて別の山に登るとまた同じことが起こるそうです。
せっかくの上高地ですから、体調は万全にして出かけたいものです。もし、それでも体調がおかしいと感じたら、無理はしないようにしてください。
コメント