うなぎの肝はうなぎのどこの部位なのか、内臓のどの部分なのかと思っている人は多いようですね。
また、うなぎの肝は豊富な栄養素を含んでいますが、食べ過ぎると何か害があるのではないかと心配している人もいます。
これらの疑問や心配に対する答えは、端的に言い表すと、
- うなぎの肝はうなぎの複数の内臓をまとめた呼称である
- うなぎの肝を食べ過ぎると身体に障害が発生する可能性がある
です。
記事では、これらの疑問や心配について、さらに詳しく、やさしく解説していますので、興味がありましたらお読みください。
うなぎの肝は複数の内臓
「肝(きも)」と呼ぶために、多くの人は「うなぎの肝は肝臓(レバー)のこと」だと、勘違いしているようですが肝臓だけではありません。
単に、うなぎの内臓と言った場合、一般には次の内臓を指しています。
- 心臓
- 胆嚢(苦玉)
- 浮袋
- 肝臓
- 胃袋
- 腸
- 腎臓
このうち「うなぎの肝」と呼ばれているのは、お店や料理人によって違いはありますが、青字の部位のことを指します。
これら以外の内臓は下処理のときに取り除かれます。とくに胆嚢(苦玉)は名前の通りかなり苦味が強いので取り除かれることが多い部位です。
ただし、料理の仕方によっては、苦玉(にがたま)も含め上にあげた全部の内臓をうなぎの肝として扱うこともあるようです。
苦玉が入っている場合、苦玉の独特のにが味が苦手な人は遠慮したほうが良いかもしれませんね。
お借りした上の画像で言えば、薬指の付け根あたりにある青味がかった丸いものが苦玉、その左が(おそらく潰れてしまった)心臓、その上の苦玉と心臓に被さる大きな部位が肝臓、苦玉の右に胃袋と腸(白い管状の部位)がつながっています。
「うなぎから肝はいくつとれるのか?」という疑問を持つ方もいらっしゃるようですが、上のような理由から答えは「ひとつ」です。
うなぎの肝に毒は含まれていない
うなぎの肝、とくに苦玉(胆嚢)の中の胆汁には毒が含まれているとの話を見聞きしますが、これは正確ではありません。
毒が含まれているのはうなぎの血液(血清)です。
うなぎの血液には「イクシオヘモトキシン」という毒が含まれており、目や口、傷口に入ると炎症を起こすことがあるほか、大量に接種すると死亡することもあります。
厚生労働省のデータによると、イクシオヘモトキシンの致死量は体重60kgの人の場合、1,000ml ということです。
この毒は、60℃、5分の加熱で完全に毒性を失うので、うなぎの肝に限らずうなぎを食べるときは、加熱調理して食べることを強くおすすめします。
職人よる完全な血抜きが行われたうなぎの刺し身や生の肝が食べられるお店がありますが、心配な人は食べないほうが良いでしょう。
うなぎの肝は栄養豊富
うなぎの肝(100g ≒ 二串分)に含まれている栄養素をまとめたの次の表です(あすけん公表のデータから作成)。数値の下の段は、同じ量のうなぎのかば焼きのデータです。
栄養素 | 摂取量 | 栄養素 | 摂取量 |
---|---|---|---|
エネルギー | 102kcal (285kcal) | ビタミンA | 4400μg (1500μg) |
タンパク質 | 13g (23g) | ビタミンE | 4mg (4.9mg) |
脂質 | 5.4g (21g) | ビタミンB1 | 0.3mg (0.75mg) |
炭水化物 | 3.6g (3.1g) | ビタミンB2 | 0.76mg (0.74mg) |
カルシウム | 20mg (150mg) | ビタミンC | 1mg (0mg) |
鉄 | 4.6mg (0.75g) | 食物繊維 | 0 (0) |
塩分 | 0.4g (1.25g) | 飽和脂肪酸 | 1.2g (5.3g) |
DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)の含有量のデータは、うなぎの蒲焼のは見つかるのですが、うなぎの肝のデータは見つかりませんでした。
表から、うなぎの肝は、低カロリーでタンパク質、ビタミン類が豊富に含まれていると言えます。
ただし、ビタミンAについては豊富すぎて注意が必要です。こちらについては、次で解説します。
うなぎの肝の食べ過ぎには注意が必要
うなぎの肝に含まれるビタミンAの量は、100g(二串)あたり約4,400μgですが、この量がビタミンAの推奨摂取量に照らし合わせてみるといかに多いかが分かります。
(表中の推奨量、耐容上限量の単位はいずれもμg)
(データは厚生労働省「ビタミン A の食事摂取基準( gRE/日)」から抜粋)
年齢(歳) | 推奨量 | 耐容上限量 |
---|---|---|
10〜11 | 600 | 1,500 |
12〜14 | 750 | 2,000 |
15〜17 | 900 | 2,500 |
18〜69 | 850 | 2,700 |
70〜 | 800 | 2,700 |
年齢(歳) | 推奨量 | 耐容上限量 |
---|---|---|
10〜11 | 550 | 1,500 |
12〜14 | 700 | 2,000 |
15〜17 | 650 | 2,500 |
18〜29 | 650 | 2,700 |
30〜69 | 700 | 2,700 |
70〜 | 800 | 2,700 |
見て分かるように、4,400μgと言う量は、男女・年齢を問わず「推奨量」はもちろん、「耐容上限量」さえもはるかに越えてしまっています。
耐容上限量とは、「健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限」(消費者庁)
ビタミンAの摂りすぎに注意
気になるのは、ビタミンAの耐容上限量を越える量のうなぎの肝を食べてしまったらどうなるか、ですよね。
ビタミンAを大量に摂ることによる障害(ビタミンA過剰症)には、急性のものと慢性のもとがあるようですが、1日あたりの量で見ると15,000μg〜30,000μg の摂取で発症するという情報があります(愛知県薬剤師会)。
症状としては、「めまい、悪心(吐き気)、頭痛、皮膚炎、関節や骨の痛み、昏睡がみられ、死亡することも(eJIM)」あるとのこと。
また、妊婦さんのビタミンA過剰症による胎児の先天異常の発生も報告されており(Teratogenicity of High Vitamin A Intake)、具体的には「眼球、頭蓋、肺および心臓の奇形など」が報告されています。
ちょっと恐ろしげなことばかり書きましたが、うなぎの肝ばかりをたくさん食べているとこういうことも起こり得る、ということを覚えておいていただけたらと思います。
うなぎの肝は1日にいくつまで食べていい?
一日に食べられるうなぎの肝の数は、ビタミンAの推奨量(700〜900μg)以内に収めるのであれば1〜2.5個、耐容上限量(2,700μg)以下に収めるのであれば6〜7個まで、ということになります。
思ったより少ない数ですね。串に5個前後刺さっているうなぎの肝だと、2本でもうほぼ上限ということになります。
肝のサイズにもいろいろありますので、あまり厳密ではないですが、通販で販売されているものは肝一つ約8〜10gのようです。
ということは、うなぎの肝一つで、ビタミンAは約350〜440μgということになり、これを元に計算したのが上の個数となります。
この個数はビタミンAをうなぎの肝だけから摂った場合の個数です。
ほかにビタミンAを含む食物を摂る場合は、その分を差し引く必要があるため、食べられるうなぎの肝の数はもっと少なくなる、ということに注意が必要です。
ただ、ビタミンAの摂取量が耐容上限量を少しでも越えてしまったら、すぐにビタミンA過剰症となるわけではありません。
普段から、推奨量や耐容上限量を意識して、うなぎの肝を食べるようにしたほうが体のためには良いと言えます。
うなぎの肝のおすすめの食べ方
こちらではおすすめのうなぎの肝の食べ方をご紹介します。
通販で購入な可能な商品紹介の掲載がありますので、興味がなければ、ここで記事の閲覧を終えてしまってもかまいません。
肝吸い
うなぎの肝と言えば「肝吸い」。もう、定番中の定番ですね。
うな重とセットで出されることが多く、かば焼とはまた別のうなぎの味を楽しむことができます。
肝吸いには、うなぎの肝のほかにみつばや麩、ゆずなどが入っていることが多く、肝の独特の風味を残した、さっぱりとした味付けがなされていることが多いです。
串焼き
うなぎの肝を5個前後串に刺して焼いたものです。焼き鳥の「うなぎの肝」版と思えば、そんなに外れていないと思います。
醤油、砂糖、みりんなどで甘辛く味付けしたものが多いですね。
大体一本300円前後の値段ですが、中には一本で1,000円を越える高級品も。どのくらい味が違うのか、食べてみたい気もしますがちょっと勇気が必要です(私の場合)。
タレ焼き
串に刺さずに焼いたうなぎの肝といった感じです。味付けも串焼きと似ていますが、やや薄味に思います(味については商品によりますね)。
食べ方としては、酒の肴にしたり、丼飯の上に並べて「うなぎの肝丼」のようにしたり、といろいろな食べ方が楽しめます。
佃煮
この記事を書いているときに見つけたのがこの商品。この画像を見た瞬間に「食べたい!」と思ってしまいました。
こちらの「うなぎの肝の佃煮」は、他店のものに比べてサイズは小ぶりですが、柔らかくて、肝の苦味が効いた甘辛味です。
小ぶりな理由は、腸を切り、腸の内容物を肝から取り除いているから。うなぎの肝のいちばんの特徴である苦味を最大限に活かすため、一つひとつ人手で作業しているんだそうです。
興味を持たれた方は、販売店による商品の解説ページだけでもご覧になってはいかがでしょうか。
ちなみに「入妻」は「いりつま」です。「ひとづま」ではありません。
まとめ
本記事では、
- うなぎの肝はどこの部位なのか
- うなぎの肝を食べすぎたらどうなるのか
- うなぎの肝は1日にいくまでなら食べても良いのか
- うなぎの肝のさまざまな食べ方と通販での購入先
について、ご紹介しました。
うな重を食べるときには脇役的な存在ですが、美味しい「うなぎの肝」だけをお腹いっぱい食べてみたいという方に、本記事が少しでも参考になればと思います。
ただし、食べる量には注意してくださいね。
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