なぜスキャパレリは火星表面に激突?今後の火星観測への影響は?

当ページのリンクには広告が含まれています。

母船トレース・ガス・オービターから火星表面に向かったスキャパレリが、火星表面に激突していたことが10月21日に明らかになりました。

スキャパレリは、欧州宇宙機関(ESA; European Space Agencies)とロシア連邦宇宙局(Roscosmos)が共同で進めている火星探査計画「エクソマーズ(ExoMars)」の着陸探査機で、ESAにとっては2003年の火星探査機の着陸失敗に続き2回目の失敗となってしまいました。

スキャパレリはなぜ火星表面に激突してしまったのでしょうか?

「エクソマーズ」を進める欧州とロシアはスキャパレリ無しで今後の観測を行っていけるのでしょうか?

目次

エクソマーズ計画

欧州宇宙機関とロシア連邦宇宙局が共同で進める「エクソマーズ計画」の目的は、火星大気を調べて、現在火星で地質学的、生物学的な活動が起こっているか調べることです。

そのために、2016年3月15日に、火星の周りを巡る微量ガス周回探査機「トレース・ガス・オービター(TGO; Trace Gas Orbiter)」、着陸探査機(着陸実証機)「スキャパレリ(Schiaparelli)」が打ち上げられました。

さらに2018年には火星探査車が打ち上げられる予定です。

火星表面に降下するスキャパレリ

トレース・ガス・オービターとスキャパレリは順調に飛行を続け、火星の周回軌道に入ると、10月19日にスキャパレリは母船トレース・ガス・オービターから切り離され、火星表面への着陸を目指して投下されました。

しかし、着陸予定時間より半日以上たった20日になっても、無事着陸したことを示す信号がスキャパレリから届きません。

当初は、着陸に失敗したか、着陸には成功したが何らかの原因(おそらく通信系のトラブル)で通信できない状態であると考えられていました。

そして、ようやく21日なって、スキャパレリが火星表面に激突していたこと明らかになったのです。

火星表面に激突したスキャパレリ

21日、アメリカ航空宇宙局(NASA; National Aeronautics and Space Administration)は、火星表面にスキャパレリが激突したとみられる写真を公開しました。

それはアメリカのマーズ・リコネッサンス・オービター(Mars Reconnaissance Orbiter)がスキャパレリの着陸地点を撮影したものです。

スキャパレリ着陸地点5月

© NASA

スキャパレリの着陸地点10月

©NASA


 

上が今年の5月に撮影したもので、下が10月20日に撮影したものです。

各写真は、左右に二つの部分から構成されていて、左側の黒い四角の枠の部分が右側に拡大されています。

下の写真を見ると、拡大部分の上部に黒い点があり、これがスキャパレリが激突した跡です。また、拡大部分の下の方には白い点も見えており、これはスキャパレリから切り離されたパラシュートであるとみられています。

[adSense]

なぜスキャパレリは火星に激突したのか?

スキャパレリが激突したとみられる黒い点は、実際には15mx40mほどのクレーターとなっているみられています。

これから計算すると、高度2~4kmの高さから時速300kmほどで火星表面にスキャパレリが衝突したと考えられます。

本来であれば、パラシュートによる降下速度の減速が行われたあとパラシュートとバックパネルが切り離され、その後火星表面に到達する直前まで9つのスラスタ(ロケットエンジン)が降下速度を減速させ、その後スラスタは停止されるはずでした。

ところがパラシュートを切り離した後、スラスタは予定よりもずっと早い段階で停止してしまったようで、スキャパレリは減速できず、長い自由落下を経て火星表面に衝突してしまったようです。

そのときスラスタの燃料がまだ大量に残っていたため衝突の際に大爆発を起こしたようです。

なぜ、予定よりもだいぶ早い段階でスラスタが停止してしまったのか、その原因はまだ分かっていません。

スキャパレリを失って観測計画への影響は?

スキャパレリは、火星周回軌道からの着陸技術の実証を行うことが主な目的とされていました。

着陸に成功すれば、短期間ではありますが火星の表面で初となる電場計測や塵の濃度計測を行い火星の砂嵐を引き起こす塵上昇に対する電場の影響を探ることも計画されていました。

しかし、メインの観測目的はトレース・ガス・オービターによる微量ガスの観測です。火星におけるメタンと発生と崩壊に関するプロセスの調査や、微量ガスに関係すると思われる火山など火星表面の撮影を行います。

メタンに関しては2004年にESAが打ち上げた火星探査機「マーズ・エクスプレス」がメタンを検出しており、この追跡調査がもっとも重要なゴールとなっています。

そのため、スキャパレリは失われましたが、今後の観測の重大な支障となることはありません。

まとめ

欧州宇宙機関とロシア連邦宇宙局が進めるエクソマーズ計画のスキャパレリについて、

  • スキャパレリが火星表面に激突した理由
  • スキャパレリの喪失が今後のエクソマーズ計画に与える影響

などについてご紹介しました。

ESAはスキャパレリの火星着陸を成功させ、前回の失敗の汚名挽回を図りたいところでしたが、再び失敗してしまいました。

2018年には火星探査車を打ち上げる予定となっています。今回の失敗の原因を明らかにして、そのときは確実に火星表面に火星探査車を送り込りたところです。

3度目の正直となるようESAにはぜひ成功させてほしいと思います。

コメント

コメントする

目次