今、アスリートたちはリオデジャネイロで、毎日素晴らしいパフォーマンスを見せてくれており、TVで観戦する私たちに深い感動を与えてくれています。
でも、そんな雰囲気にちょっと水を差すような出来事がおきているんです。
発端は米国オリンピック委員会(USOC)が出した通達です。
USOCは企業に対して「#RIO2016」のハッシュタグをつけたツイートなどを、企業がソーシャルメディアに投稿することを禁じたのです。
さらに、一部のアスリートのスポンサーとなっている企業に対しては、ゲームの結果をつぶやいたり、IOCなどの公式アカウントの発言をリツイートしたシェアすることも禁じたといいます。
もし企業がアスリートを応援するツイートすると、その選手のメダルがはく奪されることもあると伝えられており、これに対して一部のアスリートたちがとても怒っているのです。
いったい何が問題なのでしょう?
アンブッシュ・マーケティング(Ambush Marketing)
“アンブッシュ・マーケティング”とはあまり聞きなれない言葉ですが、意味は「便乗商法」。
どういうことなのかと言えば、公式にスポンサー契約していない企業がオリンピックやその他の大きなイベントに便乗して広告を出すなどのマーケティング活動を行うことを言います。
例えば、オリンピックの五輪のマークや、大会ごとのエンブレムが使用できるのは、公式スポンサーのみが使用できる権利を持っています。公式スポンサーでない企業が使用して自社の商品を宣伝したりすることがアンブッシュ・マーケティングに当てはまります。
マークやエンブレムだけではありません。公式スポンサーでない企業はオリンピックを連想させるような広告もダメなんです。
なぜ、これほど厳しいのでしょうか?
知的財産の保護
実は、オリンピック・パラリンピックに関係するエンブレム、ロゴ、用語、名称をはじめとする知的財産は、日本国内では「商標法」、「不正競争防止法」、「著作権法」等の各種法律によって保護されているのです。
2020年の東京オリンピックで言えば、おなじみの“Tokyo 2020”、“がんばれ!ニッポン!”も知的財産として保護される対象になっているんですよ。
これらを広告等に使用できるのは公式スポンサー企業だけです。
あなたの街にある小さな会社が、東京オリンピックへの応援も兼ねて(勝手に)“がんばれ!ニッポン!”を使った広告を出せば、法によって罰せられることもあるんです。
もっと言えば、2020年東京オリンピックを連想するような文言であればどんなものでもアンブッシュ・マーケティングとして不正競争行為に該当する恐れがあり、日本オリンピック委員会(JOC)や国際オリンピック委員会(IOC)から、使用差し止めの要請や損害賠償請求を受ける可能性があるんです。
アンブッシュ・マーケティングに該当するかしないかは、文言それだけで判断されるのはなく、どういう時にどんな状況で使用さるのか、についても考慮されるため注意が必要です。
たとえば、“ようこそ!東京へ!”という文言(私が今適当に作りました)は、現在なら2020年東京オリンピックとは直接結びつきません。海外からの旅行者への言葉として不自然さもありません。
しかし、これが2019~2020年になれば、明らかにオリンピック観戦のために訪れる人たちに向けた言葉として受け取られるでしょう。
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以下は、JARO(日本広告審査機構)に例として挙がっていたものです。
- 東京オリンピック・パラリンピックを応援しています。
- 祝2020年開催
- 祝2020年オリンピック・パラリンピック開催決定
- 2020年にはばたく子供たちを応援
- 東京で未来の夢を実現
- オリンピック開催記念セール
- 2020円キャンペーン
- 祝・夢の祭典
- 祝・東京決定!
- 7年後の選手を応援しています
- 「東京」「2020年」の使用(セット・単体ともに)
こんな文言でもアウトなのか!? って、思うようなものがいくつも上がっていますよね?
すべてはオリンピックの運営と選手強化のため
公式スポンサー企業でなくても、オリンピックを応援するため、オリンピックを盛り上げるためにオリンピックに関する広告を自由に打てるようにした方がいいんじゃないの?
そう思いますよね?
でも、そうとも言い切れないんです。その理由は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の知的財産保護のページ書かれていました。
該当部分を引用します。
東京2020大会におけるスポンサーシッププログラムは、オリンピック・パラリンピックに関する商標やロゴをはじめとする知的財産の使用権を中心として構成されています。
スポンサーには、これらの知的財産の使用権の見返りとして、多額の協賛金を拠出いただいており、この資金が、大会の安定的な運営及び日本代表選手団の選手強化における大きな財源となっています。
オリンピック・パラリンピックマーク等の無断使用、不正使用ないし流用は、アンブッシュ・マーケティングと呼ばれ、IOC、IPC等の知的財産権を侵害するばかりでなく、スポンサーからの協賛金等の減収を招き、ひいては大会の運営や選手強化等にも重大な支障をきたす可能性があります。
スポンサー企業からの協賛金が、オリンピックの運営だけでなく選手たちの強化に大きな役割を果たしている、ということは意識しておくべきことでしょう。
たしかに、世界や日本全国で事業を展開するような規模の企業であれば、その企業のアンブッシュ・マーケティングによって、スポンサー企業が減収となることはあるかもしれません。
でも、街の商店街が行う程度の規模であれば、街とオリンピックの活性化に役立つことはあっても、スポンサー企業の減収につながるようなことはないか、あってもほんのわずかではないかと思うんですが、考えが甘いでしょうか?
あなたはどう思いますか?
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