上高地への旅行、楽しみですよね。穂高連峰の絶景、透き通る梓川、河童橋からの眺め…。でも、ちょっと待ってください。「行き」のことばかり考えていませんか?
実は、上高地で最も多くの人が「失敗した」と後悔するのは、帰りのバスなんです。
「え、バスなんて並べば乗れるでしょ?」
そう思ったあなた、私も最初はそうでした。でも、その楽観が15時のバスターミナルで打ち砕かれることになるとは、夢にも思っていなかったのです。
この記事では、2025年の最新ルール(予約制の導入など)から、タクシー相乗りの「損得勘定」、さらには混雑を逆手に取った「夕暮れ上高地」の楽しみ方まで、帰りのバス問題を完全に攻略するための情報をお届けします。
最高の思い出を「帰りの疲れ」で上書きしないために、ぜひ最後まで読んでいってくださいね。
本記事は2025年12月時点の情報をもとに作成されています。
なぜこれほど混む?「15時〜16時の罠」と混雑のメカニズム

ボトルネックは「出口が一つしかない」こと
上高地は、日本でも有数の自然保護地域です。そのため、マイカーでの乗り入れが年間を通じて規制されています。つまり、どれだけ多くの人が訪れても、帰るときには全員が上高地バスターミナルという一つの出口に集約されるのです。
想像してみてください。朝、何十台ものバスが観光客を運んできます。昼過ぎまで皆さん思い思いに散策を楽しみます。そして、夕方近くになると…そう、全員が同じ場所に戻ってくるわけです。
これが、混雑の根本的な原因です。構造的に避けられない「ボトルの首」効果とでも言いましょうか。
みんな同じ行動パターンをとってしまう
さらに問題なのは、多くの観光客が驚くほど似たような行動をとることです。
典型的なパターンはこうです:
- 朝9時〜10時頃に上高地に到着
- 河童橋で写真を撮る
- 明神池まで往復する(片道約1時間)
- 昼食をとる
- 15時頃にバスターミナルへ戻る
どうでしょう。心当たりがありませんか?
このパターン自体は、上高地を効率よく楽しむ「王道コース」なので、決して悪いわけではありません。問題は、みんなが同じことを考えるということなんです。
時刻表を見れば混雑の理由が分かる
アルピコ交通の2025年時刻表を見ると、15時〜16時台には以下のような便が並んでいます。
松本・新島々方面:
- 15:15発
- 16:00発
沢渡方面(シャトルバス):
- 15:15発
- 15:45発
- 16:15発
- 16:55発
便数が多いのは、それだけ需要があるからです。そして、需要があるということは、それだけ多くの人が「この時間に帰りたい」と考えているということ。
結果として、時刻表上は「便が多い=乗りやすい」はずの時間帯が、実際には「人が集中しすぎて地獄」になってしまうのです。
出典:アルピコ交通 松本・新島々⇔上高地 時刻表(2025年)
体験談が物語る「リアルな待ち時間」
実際に、こんな体験をした方々もいらっしゃるようです。
- お盆に13時頃にバスターミナルへ戻ったら、すでに1時間以上の行列ができていた。
- 15時頃に並び始めたら、結局バスに乗れたのは17時過ぎ。2時間以上立ちっぱなしだった。
これらは個人の体験談ですので「必ずこうなる」とは言えませんが、GW、お盆、三連休などの繁忙期には「1〜3時間程度の待ち」が発生することがあるというのは、複数の情報源で言及されています。実際に、私の体験でも、15時頃のバスに乗るときには、1時間以上待つことが多かったです。
「まさか自分がそうなるとは」と思うかもしれませんが、備えあれば憂いなしですよね。
【2026年最新】「整理券」と「予約制」の違いを正しく理解する

上高地のバスは「行き先」でルールが違う
上高地バスターミナルには、複数の行き先へのバスが発着しています。そして、ここが非常に重要なのですが、行き先によって乗車のルールが異なります。
主な行き先は以下の2つです:
- 松本・新島々方面(アルピコ交通の路線バス)
- 沢渡・平湯方面(シャトルバス)
それぞれ、乗車方法がまったく違うので、混同しないように注意してくださいね。
松本・新島々方面:2025年は「予約制(便指定)」が基本
2025年シーズン、アルピコ交通は上高地⇔松本・新島々間のバスを「予約制(便指定)」としています。
これは非常に重要な変更点です。以前は「整理券をもらって並ぶ」方式でしたが、現在は事前にインターネットで予約するのが基本となっています。
予約のポイント:
- 予約開始日:2025年は3月17日から受付開始
- 予約方法:インターネットのみ(発車オーライネット)
- 電話予約:不可
- 予約内容:便の指定(座席指定ではない)
- 座席確保:予約しても座席は確保されない。乗車は並び順
ここで「あれ?」と思った方、鋭いですね。
そうなんです。予約しても座席は確保されないんです。予約はあくまで「その便に乗る権利」を得るだけで、座席を確保するには早めに並ぶ必要があります。
「予約したから安心」と油断していると、満席のため座れない可能性あるので気をつけたいところです。
沢渡・平湯方面:基本は「乗車券のみ」、混雑時は整理券
一方、沢渡駐車場や平湯温泉あかんだな駐車場へ向かうシャトルバスは、基本的に予約不要です。
上高地バスターミナルの自動券売機で乗車券を購入し、のりばに並べばOK。シンプルですよね。
ただし、混雑日には「乗車整理券」が配布される可能性もありますので、実際には現地の案内に従ってください。
シャトルバスのポイント:
- 乗車券:自動券売機で購入
- 整理券:混雑日に配布される場合あり(座席確保ではない)
- 乗車順:基本的に並んだ順
つまり、シャトルバスは「どれだけ早く並ぶか」が勝負になるわけです。
出典:上高地公式サイト「上高地バスターミナル・タクシーのりば」
よくある誤解を解消しておこう
この「予約制」と「整理券」の違いは、意外と混乱しやすいポイントです。よくある誤解を整理しておきましょう。
Q. 予約すれば確実に座れる?
A. いいえ。予約は「便指定」であり、座席指定ではありません。早めに並ぶ必要があります。
Q. 整理券をもらえば安心?
A. いいえ。整理券も座席確保ではありません。乗車順を管理するためのものです。
Q. 予約しないとバスに乗れない?
A. 松本・新島々方面は予約制が基本です。沢渡・平湯方面は予約不要ですが、混雑時は待つことになります。
Q. 当日でも予約できる?
A. 空きがあれば可能ですが、繁忙期は事前に埋まることが多いです。
これらを理解しておくだけで、現地での混乱をかなり減らせるはずです。
沢渡シャトル組の切り札「タクシー相乗り」の損得勘定

「タクシーは高い」という思い込みを捨てよう
「タクシーなんて高いでしょ?バスで我慢するよ」
多くの人がそう考えます。でも、ちょっと計算してみませんか?
上高地から沢渡駐車場までの運賃を比較してみましょう。
- 路線バス(シャトル)
片道 1,500円(一人あたり) - タクシー(定額制)
片道 約5,400円(一台あたり)
一見すると、タクシーはバスの約3.5倍です。高く見えますよね。
でも、ここからがポイントです。
4人で乗れば「バスより安い」マジック
タクシーの定額料金は「一台あたり」です。つまり、乗車人数で割れば一人あたりの金額は大きく変わります。
- 4人で乗った場合
5,400円 ÷ 4人 = 1,350円/人
あれ?バス(1,500円)より安いじゃないですか!
- 3人で乗った場合
5,400円 ÷ 3人 = 約1,800円/人
バスより300円高いだけです。
- 2人で乗った場合
5,400円 ÷ 2人 = 2,700円/人
これは少し高いですが、それでも差額は1,200円。
1時間以上バスの列に並ぶ苦痛を、1,200円で解消できるなら…どうでしょう?
相乗り相手の見つけ方(マナーを守って)
「でも、4人も知り合いがいないし…」
大丈夫です。繁忙期のバスターミナルには、同じように困っている人がたくさんいます。
相乗り相手を見つけるコツ:
- タクシー乗り場の近くで声をかける:同じ方向(沢渡方面など)に帰る人を探しましょう。「沢渡まで相乗りしませんか?」と声をかけてみてください。
- 家族連れを狙う:3〜4人のグループなら、ちょうど一台に収まります。声をかけやすいですし、相手も喜ぶことが多いです。
- マナーを忘れずに:断られても笑顔で。しつこく勧誘するのはNGです。
実際、繁忙期には「相乗りしませんか?」という声があちこちで聞こえます。決して恥ずかしいことではありませんし、むしろ賢い選択です。
注意点:ゾーンによって料金が変わる
一つ注意しておきたいのは、タクシーの定額料金は「どこまで行くか」によって変わるということです。
環境省の資料によると、沢渡は「上ゾーン」と「下ゾーン」に分かれており、それぞれ料金が異なります(最初に上げた料金計算は沢渡上ゾーンを対象にしたものでした)。
- 上高地 → 沢渡上ゾーン:約5,400円
- 上高地 → 沢渡下ゾーン:約6,000円
駐車した場所によって料金が変わりますので、乗車前にドライバーさんに確認しましょう。
あえて「17時以降」にずらす「夕暮れ上高地」のススメ

逆転の発想:混雑を避けるなら「残る」
ここまで読んで、「15時〜16時は避けたほうがいいのは分かったけど、じゃあどうすれば…」と思った方もいるでしょう。
私がおすすめしたいのは、あえて17時以降まで残るという戦略です。
「え、遅くなるの嫌なんだけど…」
気持ちは分かります。でも、この戦略には大きなメリットがあるんです。
人が減った河童橋は「別世界」
15時〜16時のピーク時、河童橋周辺は人でごった返しています。写真を撮ろうにも、人が写り込んでしまう…そんな経験はありませんか?
でも、17時を過ぎると状況は一変します。
日帰り観光客の多くがすでに帰路についているため、河童橋周辺は驚くほど静かになります。穂高連峰をバックに、人が写り込まない写真が撮れるのは、この時間帯だけかもしれません。
夕暮れの穂高連峰は「インスタ映え」の宝庫
写真好きの方には、夕暮れ時の上高地は最高のシャッターチャンスです。
西日を浴びて赤く染まる穂高連峰、オレンジ色に輝く梓川の水面…。昼間とはまったく違う表情を見せてくれます。
「混雑を避けるために残る」のではなく、「この絶景を見るために残る」と考えれば、待ち時間もポジティブに変わりますよね。
最終便は絶対に逃すな!リスク管理の鉄則
ただし、この戦略には絶対に守らなければならないルールがあります。
それは、最終便の時刻を正確に把握し、余裕を持って戻ることです。
2025年の沢渡方面シャトルバスの最終便は、時刻表によると17:30発です。
この最終便を逃したら、基本的にはタクシーしか選択肢がありません。そして、タクシーも出払っていたら…考えたくもないですよね。
私のおすすめ:
- 16:30頃:夕暮れ撮影を楽しむ
- 17:00頃:バスターミナルへ移動開始
- 17:15頃:のりばで待機
30分の余裕を持つことで、万が一のトラブルにも対応できます。
出典:アルピコ交通 沢渡⇔上高地シャトル時刻表(2025年)
到着した瞬間が勝負!「詰み回避」のための行動チェックリスト

「帰りの交通を先に確定する」が鉄則中の鉄則
ここまで読んでいただいた方なら、もうお分かりですよね。
上高地で「詰まない」ための最大のポイントは、帰りの交通を先に確定してから歩くプランを逆算することです。
「行きたい場所」から考えるのではなく、「帰りの時間」から逆算する。この発想の転換が、全てを変えます。
【出発前】やっておくべきこと
- 松本・新島々方面の方
-
- 1ヶ月前からWeb予約可能。繁忙期は早めに予約を済ませておく。
- 予約サイト:発車オーライネット
- 沢渡・平湯方面の方
-
- 時刻表をスクリーンショットしておく(現地で電波が弱いことがあるため)。
- 最終便の時刻を暗記しておく(2025年は17:30発)。
- タクシー料金を把握しておく
-
- 沢渡まで定額約5,400円。4人なら一人1,350円。
- 「バスの列がひどかったらタクシー」という選択肢を最初から持っておく。
【到着時(朝)】まず最初にやること
上高地に到着したら、河童橋に行く前に、まずバスターミナルで帰りの準備をしましょう。
- 帰りの時間を決める
-
- 何時のバスで帰るか、この時点で決めてしまう。
- 整理券が必要な日なら確保する
-
- 繁忙期は、到着時点で希望時間の整理券を取っておく。
- のりばの場所を確認しておく
-
- 帰りに迷わないように、自分が乗るバスののりばをチェック。
「せっかく来たのに、帰りのことばかり考えるなんて…」と思うかもしれません。でも、この10分の準備が、後で何時間もの待ち時間を節約してくれるんです。
【散策中】常に意識しておくこと
- 帰りの時間から逆算して行動する
-
- 「15時のバスに乗りたいなら、14時にはバスターミナルにいる」くらいの余裕を。
- 「決断のライン」を決めておく
-
- 「14時を過ぎたら諦めて17時まで残る」など、自分なりのルールを決めておく。
- 天気の変化に注意
-
- 雨が降りそうなら、みんな早めに帰りたがる。ピークが前倒しになる可能性あり。
【緊急時】タクシーへのダッシュ判断
バスの列が想像以上に長かったら、すぐにタクシー乗り場を確認しましょう。
タクシーに切り替えるべき目安:
- バスの列が「30分以上待ち」と感じたら
- 同行者に子供やお年寄りがいる場合
- 後の予定(新幹線など)に影響がある場合
繁忙期はタクシーにも列ができることがありますが、バスより短いケースが多いです。迷ったらすぐ行動しましょう。
注意したいリスクと限界
タクシーも「来ない」ことがある
ここまでタクシーの活用をおすすめしてきましたが、正直に言っておかなければならないことがあります。
超繁忙期は、タクシーが出払ってしまうことがあります。
全てのタクシーが稼働中で、新たな配車ができない状況です。こうなると、タクシー乗り場で待つしかありません。
「タクシーがあるから大丈夫」と油断せず、やはり早め早めの行動を心がけましょう。
天候リスク:雨ならピークが前倒しに
上高地は山岳地帯です。天気は変わりやすい。
晴れていればのんびり散策を楽しむ人も、雨が降り出すと「早く帰りたい」と考えます。結果として、通常は15時〜16時に来る混雑のピークが、13時〜14時に前倒しされることがあります。
天気予報をこまめにチェックし、雨の日は普段より早めに行動するのが賢明です。
17時以降は「お店が閉まる」
「夕暮れ上高地」戦略を取る場合、一つ覚悟しておいてほしいことがあります。
それは、売店や食堂の多くが17時頃には閉まるということです。
「お腹すいた」「トイレに行きたい」となっても、選択肢がかなり限られます。
- 昼食時に「おやつ用の追加購入」をしておく
- 飲み物は余分に持っておく
- トイレは早めに済ませておく
夕暮れ時の静かな上高地を楽しむためには、こうした準備が欠かせません。
まとめ:最高の思い出を「疲れ」で上書きしないために
長い記事を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ここまでお伝えしてきたことを、シンプルにまとめておきましょう。
上高地「帰りのバス」攻略の3つの鉄則
1. 帰りの交通を「先に」確定する
- 松本方面なら事前にWeb予約
- 沢渡方面なら到着時に帰りの時間を決める
- 「歩くプラン」は、帰りの時間から逆算する
2. 15時〜16時は「魔の時間帯」と心得る
- この時間帯に帰ろうとすれば、1時間以上待つ覚悟を
- 避けたいなら、14時前に帰るか、17時以降まで残る
3. タクシーは「高くない」
- 4人なら一人約1,300円(バスより安い)
- 相乗り相手を見つける勇気を持とう
- 待ち時間を「お金で買う」という選択肢を最初から持っておく
「並ぶのも思い出」と割り切れる人以外は準備を
正直に言えば、「1時間待ったけど、それも旅の醍醐味だよね」と笑えるタイプの人もいます。それはそれで素敵なことです。
でも、帰りの新幹線に間に合わなかったり、疲れ切った子供がぐずり出したり、せっかくの旅行の最後にケンカしたり…そんな経験はしたくないですよね。
少しの準備と、ちょっとした発想の転換で、帰りのバス問題は必ず攻略できます。
この記事が、あなたの上高地旅行のお役に立てれば幸いです。
素敵な旅を!
