沢渡(さわんど)車中泊で「上高地」の勝敗は決まる。トイレ・静寂・始発バス攻略ガイド

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「上高地への前泊、どこでも同じだと思っていませんか?」

もしあなたが、上高地へマイカーで向かい、沢渡(さわんど)駐車場で車中泊をして翌朝一番のバスを狙っているなら、駐車場の選び方だけは間違えないでください。

沢渡には多数の駐車場が存在しますが、適当に入ったその場所が、あなたの安眠を奪い、翌日の上高地散策を「寝不足の修行」に変えてしまうリスクをあるからです。

  • 「夜中にトイレに行きたくなったが、真っ暗で怖くて行けなかった」
  • 「傾斜がきつくて、体がずり落ちて一睡もできなかった」
  • 「始発バスに乗るつもりだったのに、バス停まで遠すぎて長蛇の列に並び遅れた」

これらはすべて、沢渡での車中泊で実際によくある「失敗談」です。

標高1,000mを超える山間の夜は、想像以上に冷え込みます。コンビニの明かりもありません。そんな環境で一晩を過ごし、翌朝4時、5時の始発に合わせて動き出すためには、「戦略的な場所選び」が不可欠です。

この記事では、上高地へのゲートウェイである「沢渡駐車場」での車中泊について、徹底的に解説します。

  • 「トイレが綺麗で安心できる場所はどこか」
  • 「始発バスに確実に座るためにはどこに停めるべきか」
  • 「キャンピングカーでも利用できる場所はあるのか」

ネット上の古い情報や、ふわっとしたまとめ記事には載っていない、現地ルールとリアルな居住性に基づいた「正解」を断定します。

これを読めば、あなたの車中泊はただの「待機時間」から、ワクワクする「上高地・前夜祭」へと変わるはずです。

準備を万全にして、最高のコンディションで、大正池の朝もやと河童橋の絶景を迎えに行きましょう。

目次

後悔しないために選ぶべき駐車場は「この3択」だけ

沢渡地区には市営・民間あわせて2,000台近い駐車スペースがありますが、車中泊で快適に過ごし、かつ翌朝スムーズに行動したいなら、候補は実質3つに絞られます。

まずは結論からお伝えします。ご自身の優先順位に合わせて選んでください。

【トイレ快適派】迷わず「市営第2駐車場(足湯公園)」

女性、お子様連れ、あるいは「夜中のトイレが心配」という方は、ここ一択です。

沢渡エリアで唯一と言っていい、「24時間利用可能かつ、明るくて清潔なトイレ(足湯公園トイレ)」が隣接しています。

他の駐車場では、夜間はトイレが閉鎖されていたり、薄暗い公衆トイレだったりすることが多い中、ここの安心感は別格です。

【始発確保派】「市営第3駐車場(かすみ沢)」一帯

写真愛好家や登山者で、「絶対に始発バスに乗りたい」「1分1秒を惜しんで行動したい」という方は、市営第3駐車場(かすみ沢)またはその周辺を選んでください。

ここは「ナショナルパークゲート(バスターミナル機能)」に地下道で直結しており、始発待ちの列形成場所まで最短距離でアクセスできます。

トイレの快適さよりも、「朝の動線の良さ」と「100%の乗車確実性」を取るならここです。

【キャンピングカー派】「市営第4駐車場(岩見平)」一択

もしあなたがキャンピングカーで訪れるなら、選択の余地はありません。

沢渡の市営駐車場の中で、キャンピングカーの利用が認められているのは「市営第4駐車場」のみです(※サイズ制限あり)。

他の広大な駐車場に入っても、ルール違反として移動を求められる可能性があります。最初から第4を目指してください。

市営駐車場の共通基本ルール(2026年版)

場所を選ぶ前に、必ず押さえておきたい基本ルールがあります。

  • 料金: 1日 800円(2025年度より改定)。後払いの自動ゲート式です。
  • 日付またぎの注意: 料金は「入庫から24時間」ではなく「日付(0時)」で切り替わります。例えば23時59分に入庫しても、日付が変われば2日分の料金(1,600円)になる可能性があります(※入庫1時間無料の規定など、詳細は現地の看板を要確認ですが、基本は日付計算です)。
  • 現金(1,000円札)必須: 2025年からキャッシュレス決済対応が進む予定ですが、山間部では機器トラブルや通信エラーも想定されます。新紙幣対応を含め、1,000円札と小銭は必ず多めに用意してから向かってください。

【徹底比較①】「トイレと安眠」を最優先するなら「市営第2(足湯公園)」

「車中泊はしたいけれど、トイレが汚いのは絶対に無理」「夜中に真っ暗なトイレに行くのが怖い」

そんな不安を持つ方にとって、市営第2駐車場はまさにオアシスです。

唯一無二のメリット:24時間「足湯公園トイレ」が使える

沢渡エリアのトイレ事情は、意外とシビアです。

最大の拠点である「沢渡バスターミナル」のトイレでさえ、利用可能時間は5:00〜17:00(※繁忙期等は例外あり)となっており、深夜は閉まっていることがあります。

また、古い公衆トイレは和式のみだったり、虫が多かったりと、慣れていない人にはハードルが高いのが現実です。

しかし、市営第2駐車場に隣接する「さわんど湯の郷公園(足湯公園)」のトイレは、通年24時間利用可能であることが公式に明記されています。

ここは公園として整備されているため照明も明るく、比較的新しくて清潔です。

夜中に目が覚めても、ヘッドライトなしで安心して歩いて行ける環境は、ここ以外にはなかなかありません。

足湯でのんびり「前夜祭」気分

その名の通り、公園内には足湯(無料)があります。

上高地へのワクワク感を語り合いながら、運転で疲れた足を足湯で癒やす。そんな「前夜祭」のような時間を過ごせるのも、この駐車場の魅力です。

(※足湯の営業時間には限りがありますので、到着時間によっては終わっていることもあります)

【注意】最大のデメリットは「翌朝のバス移動」

良いことづくめに思える市営第2ですが、一つだけ致命的な注意点があります。

それは、目の前にある**「足湯公園前」バス停は、上高地からの『降車専用』であり、上高地行きのバスには乗車できない**という点です。

「目の前にバス停があるから楽勝!」と思っていると痛い目を見ます。

翌朝、上高地行きのシャトルバスに乗るためには、少し歩いてバスターミナルへ向かうか、別のバス停まで移動する必要があります。

始発バスを巡る争奪戦において、この「移動の手間」は若干のタイムロスになります。

「とにかく始発の最前列に並びたい!」というガチ勢には不向きですが、「まあ次のバスでも座れればいいや」というゆとりある旅なら、間違いなくここがベストチョイスです。

満員バスを見送りたくない場合は、始発時間の30分〜1時間前には起きて身支度を整え、バスターミナルへ徒歩移動を開始することをおすすめします。

徹底比較②】「始発バス最速確保」を狙うなら「市営第3(かすみ沢)」

目的が「写真撮影」や「登山」で、朝一番の光を大正池で捉えたい、あるいは岳沢や焼岳へアタックしたいという場合。

駐車場の快適さよりも「朝の機動力」が全てです。そんなあなたには市営第3駐車場(およびその周辺)を強く推奨します。

「ナショナルパークゲート」直結の圧倒的優位性

市営第3駐車場の最大の強みは、「ナショナルパークゲート」へ地下道で直結している点です。

ナショナルパークゲートは、待合所やインフォメーションセンターを備えた拠点で、ここからバスターミナル(さわんどバスターミナル)へのアクセスが非常にスムーズです。

始発バスは「沢渡バスターミナル」から発車します。

他の駐車場(例えば第2や第4)に停めた場合、バス停までの移動時間を見積もる必要がありますが、第3なら「起きてすぐ並ぶ」が可能です。

特にゴールデンウィークや夏休み、紅葉シーズンのピーク時は、始発バスに乗るために早朝4時台から長蛇の列ができます。

この「場所取り合戦」において、バス停の目の前に車があるというアドバンテージは計り知れません。

タクシー相乗りも狙いやすい

バス待ちの列があまりに長い場合、またはバスの時間前に出発したい場合、タクシーを利用するという手があります。

沢渡〜上高地間のタクシーは定額運賃(沢渡上ゾーン5,400円前後〜)が決まっており、4人で乗ればバス往復とそこまで変わらない金額で行けることもあります。

バスターミナル周辺にはタクシー乗り場もあり、同じように「相乗りしませんか?」と声をかけ合っている登山者を見つけやすいのも、このエリアのメリットです。

デメリット:夜間のトイレ事情

一方で、居住性には少し難点があります。

前述の通り、沢渡バスターミナルのトイレは夜間閉鎖されることがあり、その場合、最寄りの24時間トイレまで少し歩く必要があります(グレンパークや足湯公園まで行く必要があるかもしれません)。

「夜中にトイレに行きたくないから水分を控える」といった対策をする登山者もいますが、体調管理には十分注意してください。

「寝るだけ」と割り切れる、タフな旅人向けの駐車場と言えるでしょう。

チケット攻略:窓口が開くのは始発10分前

意外な落とし穴として、バスターミナルの切符売り場が開くのは**「始発の約10分前」**です。

始発に乗るために1時間前から並んでいるのに、切符を持っていなければ、窓口が開いた瞬間に列を離れて買いに行かなければならず、順番抜かしのリスクが発生します。

対処法としては以下の通りです。

  1. 車内で買う: シャトルバスの乗務員から直接購入できる場合があります(千円札必須)。
  2. スマホ決済: 窓口混雑を回避できるWebチケット等の導入状況を、直前にアルピコ交通のサイトで確認してください。
  3. 複数人での行動: グループなら、並ぶ係と買いに行く係を分けましょう。

その他の選択肢と「キャンピングカー」の掟

上記2つの選択肢以外にも、状況に応じた駐車場があります。特にキャンピングカーユーザーは要注意です。

キャンピングカーは「市営第4(岩見平)」へ

上高地公式サイトやさわんど温泉のQ&Aで明確に指定されていますが、市営駐車場でキャンピングカーを受け入れているのは「第4駐車場(岩見平)」のみです。

しかも、「駐車枠(2.5m×6m)に収まる車両限定」というサイズ制限があります。大型のアメリカンモーターホームなどは利用できない可能性があります。

第4駐車場のメリットは、すぐ近くに「グレンパークさわんど」という施設があり、ここのトイレが通年24時間利用可能であることです。

また、バス停「K-23 沢渡岩見平」も近くにあり、始発バス(沢渡バスターミナル発)がここを経由して乗せてくれます。

ただし、始発の時点でバスターミナルから満員で来る場合、補助席になるか、最悪の場合は次のバスを待つことになるリスクもゼロではありません。

それでもルールとしてここしか停められないため、キャンピングカーの方は早めの準備を心がけてください。

バイク(二輪車)は民間駐車場へ

ツーリングで訪れるライダーの方へ。

市営駐車場の自動ゲートは四輪車専用で、バイクを感知できないため利用できません

「民間駐車場」を利用してください。例えば「茶嵐駐車場」などがライダーを受け入れており、料金も1日400円程度(最新情報は現地確認)とリーズナブルに設定されています。

民間駐車場の魅力(茶嵐など)

市営以外にも、地元の旅館やお土産屋さんが運営する民間駐車場が点在しています(茶嵐、梓など)。

これらは「店員さんが有人で誘導してくれる」「予約こそできないが、融通がきく」といったメリットがあります。

また、民間駐車場の一部では、その場でタクシーを呼んでくれたり、独自のトイレを貸してくれたりと、温かいサービスを受けられることも。

混雑する連休などは、機械的な市営よりも、こうした民間駐車場の方が逆にスムーズに入れることもあります。

【重要】絶対に失敗しないための「事前準備リスト」

駐車場が決まっても、装備が不足していれば地獄を見ます。

沢渡にはコンビニがありません

最も近いコンビニ(セブンイレブン 波田赤松店など)でさえ、車で20〜30分山を下った新島々駅周辺まで戻らなければなりません。

一度駐車場に入ってビールを飲んでしまったら、もう買い出しには行けないのです。

以下のリストを必ずチェックし、松本ICを降りたらすぐに(あるいは降りる前に) すべて揃えてから登ってきてください。

1. 食料・飲料の完全確保

  1. 夕食、翌朝の朝食、行動食、飲み物(水・お茶・アルコール)。
  2. 特に水は多めに。カップ麺を食べるならその分の水も必要です。
  3. 沢渡周辺には自販機はありますが、売り切れや故障のリスクも考慮し、持参が基本です。

2. 厳重な寒さ対策(GWでも冬装備で!)

  • 沢渡の標高は約1,000m。平地とは別世界です。
  • 春(4月〜6月)や秋(10月〜11月)の夜間は、平気で氷点下近くまで冷え込みます。
  • 「エンジンをかけっぱなしで暖房をつければいい」は絶対にNG(後述)。
  • 冬用の寝袋(シュラフ)、毛布、ダウンジャケットは必須です。
  • 車の窓からの冷気を遮断する「サンシェード(目隠し)」も、プライバシー保護と断熱の両面で必須アイテムです。

3. 現金(1,000円札と小銭)

  • 駐車場料金(自動精算機)、バス車内での切符購入、自販機、コインロッカー、有料トイレ(上高地内)。
  • 山では「新紙幣が使えない」「カード端末が圏外で反応しない」といったトラブルが日常茶飯事です。
  • 2,000〜3,000円分の小銭と、数枚の1,000円札を用意しておけば、どんな状況でも詰むことはありません。

4. その他あると便利なもの

  • LEDランタン: 車内照明用。ルームランプはずっと点けているとバッテリー上がりの原因になります。
  • 耳栓・アイマスク: 駐車場には他の車もいます。ドアの開閉音や話し声、街灯の眩しさを遮断して眠るために。
  • 携帯トイレ: 万が一、トイレ行列に耐えられない時の緊急用として(使う日が来ないことを祈りますが)。

【反論・警告】車中泊を「やめるべき」人・時

ここまで車中泊を推奨してきましたが、場合によっては「車中泊を諦める」勇気も必要です。

無理な車中泊は、楽しい旅行を台無しにするだけでなく、周囲への迷惑や事故につながります。

真冬並みの装備がない時の「春・秋」

「春だから大丈夫だろう」「フリース1枚あれば寝れるだろう」という甘い考えは捨ててください。

寒さで一睡もできなければ、翌日の上高地散策を楽しむ体力は残りません。

装備に自信がない場合は、素直に沢渡周辺の温泉宿(さわんど温泉には良い宿がたくさんあります)や、平湯温泉の宿を予約するか、松本市内のホテルに泊まって早朝に出発しましょう。

「アイドリングしないと眠れない」人

沢渡の駐車場は、自然環境保護の観点からもアイドリング・ストップが基本です。

また、駐車場には多くの登山者が仮眠を取っています。エンジン音や排気ガスの臭いは、周囲にとって想像以上のストレスとなり、トラブルの原因になります。

「エンジンを切ると寒くて寝られない(または暑くて寝られない)」という装備・季節なら、車中泊はすべきではありません。

火気を使いたい人(キャンプ感覚の人)

駐車スペースでのバーナー使用、コンロでの調理、テーブル・椅子の展開は厳禁です。

ここはキャンプ場ではなく、あくまで「駐車場」です。公共の場所での仮眠であることを忘れないでください。

温かい食事がとりたいなら、お湯を持参するか、車内で完結する食事に留めましょう。

結論:あなたのスタイルで「前夜」を選ぼう

沢渡での車中泊は、上高地という特別な場所へ入るための儀式のようなものです。

最後に、もう一度選び方をまとめます。

  1. トイレと心の平穏を何より大事にするなら、「市営第2(足湯公園)」
  2. 始発バスにトップバッターで乗り込みたいなら、「市営第3(かすみ沢)」
  3. キャンピングカーで旅するなら、ルールを守って「市営第4(岩見平)」

どの場所を選んでも、事前の買い出しと寒さ対策さえ万全なら、満天の星空の下で過ごす時間は素晴らしい思い出になるはずです。

翌朝、始発のバスに揺られて釜トンネルを抜けた瞬間、目の前に広がる穂高連峰の輝きは、この少し不便な夜を乗り越えた人への最高のご褒美です。

今すぐ準備! 沢渡車中泊チェックリスト

出発前に、これだけはチェックしてから家を出てください。

チェックリスト
  • [ ] 同行者と「トイレ重視」か「始発重視」か相談して目的地を決めたか?
  • [ ] 冬用シュラフ、毛布、ダウンジャケットを車に積んだか?
  • [ ] 窓の目隠し(サンシェード)とLEDランタンを用意したか?
  • [ ] 松本IC周辺のコンビニ・スーパーを地図で確認したか?
  • [ ] 財布の中に1,000円札と100円玉がたっぷりと(2,000円以上)入っているか?
  • [ ] 車のガソリンは満タンか?(山中ではスタンドも少ない)

それでは、安全運転で。上高地で最高の朝をお迎えください!

出典・参考URL一覧

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