スーパードクター。
神の手をもつ男。
さまざまな呼び名で呼ばれる小児肝臓移植の第一人者の笠原群生(かさはら むれお)医師をご存知でしょうか?
世田谷にある国立成育医療センターに努める笠原医師は、2005年から同センターで小児肝移植を行っており、その件数は2016年末までで440例を超えています。
しかも、肝移植後の患者生存率は90%を超えており、これが笠原医師が「神の手を持つ」と言われる理由です。
本記事では、スーパードクター笠原群生医師の経歴や実績、そして同センターで行われる「ブラック・ジャックセミナー」についてご紹介したいと思います。
笠原群生医師

笠原群生医師の経歴
名前: 笠原群生(かさはら むれお)
生年月日: 1966年2月10日([birth day=’19660210′]歳)
出身地: 群馬県前橋市
大学: 群馬大学
大学卒業後の主だった経歴は次の通りです。
1992年 | 群馬大学医学部卒業 |
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1992年 | 群馬大学外科レジデント(※レジデントとは研修医のことです) |
1996年 | 京都大学移植外科レジデント |
1999年 | 京都大学移植外科助手 |
2002年 | 英国Kings College Hospital, Liver transplant unit, Clinical fellow |
2003年 | 京都大学移植外科医長 |
2005年 | 国立成育医療研究センター 移植外科医長 |
2011年 | 国立成育医療研究センター 臓器移植センター長 |
2017年4月 | 国立成育医療研究センター 副院長を兼任 |
笠原医師の両親も群馬大学を卒業しており、循環器内科医であった父親の背中を追うように医師となりました。
子供時代もさぞかし優秀だったと思いきや、本人曰く『あまり優秀な子供ではなかった』とのこと。
朝早くから夜遅くまで、川で魚を取ったり、ザリガニを釣ったり、山で虫取りをしていたそうで、親によく怒られていたといいます。意外に、普通の子供、だったのですね。
笠原医師が移植医療を意識したのは、Wikipediaによれば、大学4年のときに島根医科大学(現在の島根大学医学部)で日本で初めての生体肝移植が成功したというニュースがきっかけでした。
移植医療は移植をしなければ確実に亡くなってしまう患者さんを救う医療です。移植手術を行い、患者さんが元気になって行くのをみるのはとても幸せなこと、と笠原医師は仰ってます。
一方で、患者さんの治療がうまくいかないととてもつらくなる、とも仰っています。
移植手術後の患者さんの生存率が9割ということは、裏を返せば1割の方は亡くなっているということです。笠原医師は、この1割も救うために、9割を10割にするために頑張っているのです。
笠原群生医師の実績
笠原医師の実績についてご紹介しましょう。これは、国立成育医療研究センターの肝移植の歴史と言っても過言ではありません。
2005年6月1日 | (国立成育医療研究センターに移植外科開設) |
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2005年11月18日 | 国立成育医療研究センターにおいて初めての生体肝移植が行われる |
2007年5月18日 | 国内で初めての生体肝腎同時移植を成功させる |
2010年8月29日 | 脳死肝移植(分割) 脳死ドナー(臓器提供者)の肝臓を分割し複数の患者に移植 |
2011年5月1日 | (臓器移植センター開設) |
2012年6月15日 | 小児ドナーからの脳死肝移植が行われる(10歳未満の女児へ移植) |
2013年8月10日 | 肝細胞移植 世界で初めて生体肝移植時の余剰肝臓を用いた肝細胞移植に成功する |
2013年12月19日 | 腹腔鏡を使用したドナー手術 生体ドナーの身体負担をできるだけ軽減する手術法の開発 |
2014年6月18日 | 小児間でドミノ肝移植(※) |
2016年11月 | ES細胞を用いた肝細胞移植の前臨床試験 |
※肝移植で取り出された肝臓をより症状の思い患者へ移植する手術。
いかがでしょうか? 国内初、世界初、あるいはあらたな技術の開発といった手術例が並んでいることに驚かれされませんか?
細心の肝移植についても見てみましょう。下記は、2005年11月から2016年12月までの国立成育医療センターにおける肝移植後の患者生存率の表です(クリックすると拡大します)。

ご覧の通り、1年生存率、3年生存率、5年生存率、10年生存率のいずれも全国平均を上回っており、移植した臓器が生着する率は、日本国内で最良です。
たとえば、5年生存率は全国平均が86.8%に対して、国立成育医療センターは91.8%にもなります。
え? 5%の違いしかない?
数値的には確かにそうかもしれません。たった5%かもしれませんが、5%も生存率を高めるのは、実はとてもはたいへんなことなんです。
高度な医療技術だけでなく、手術前や手術後の患者さんへのケアも含めて、笠原医師が地道に努力してきたからこそある数値なんです。
ブラック・ジャックセミナーとは?
国立成育医療センターは、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の協力を得て、毎年「ブラック・ジャック セミナー」を実施しています。
どんなセミナーなのか? その目的について、公式サイトには次のように説明されています。
ブラック・ジャック セミナーは、医学に直接触れる機会を学生に提供することで、これからの日本の小児医療を支える人材を育てることに貢献できればという願いを込め、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社との共催にて実施いたします。
沢山の子どもたちが医療を志してくれたらと願っています。

対象となるのは、小学校3年生から高校生までの青少年で、次のようなことを実際に体験することができます。
- 手術縫合体験
- 最新医療機器体験(超音波メス)
- 内視鏡トレーニング体験
- 超音波検査体験
いやぁ、本格的ですね。
笠原群生医師はこのセミナーについて次のように述べています。
「ブラック・ジャック」のイメージは、かっこいいなんでも治せる天才外科医。“第4話 ときには真珠のように”本間丈太郎先生の「人間が生き物の生き死にを自由にしようなんて、おこがましいと思わないか」のセリフが好きです。
外科医はだれでもなれるものではありません。高い技術と精神力が必要です。外科医は手術で患者さんを治すことができます。大変だけどやりがいのある仕事です。沢山の子どもたちが医者を目指してくれたらうれしいです。外科医になって私たちと一緒に困っている患者さんたちを治していきましょう。
今年(2017年)の募集は、残念ならが終了してしまいました。
笠原医師は、今後チャレンジしたいこととして、後輩の外科医を育成することを上げています。
ぜひ医学や医療に興味のある青少年に参加してい欲しいと思います。セミナー参加者の中から、第2、第3の “笠原群生” が生まれることを期待したいですね。
まとめ
7月10日の『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)で、笠原群生医師のことが取り上げられます。
密着取材によって、これまで知られることのなかった笠原医師の一面が明らかになるのではないでしょうか? ぜひご覧ください。
それにしても番組紹介文の中の『泣き虫ドクター』って? 笠原医師は涙もろいのでしょうか? 気になりますね!