JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、2017年1月15日(日)8時33分、鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所で行われた、世界最小級のロケットの打ち上げに失敗したことを発表しました。
気象衛星「ひまわり」や小惑星探査機「はやぶさ2」を打ち上げたH-IIAロケットは、全長が50m(17階建てのビルに相当)するほど巨大ですが、7号機以降連続25回の打ち上げに成功しています。
これに対して、今回打ち上げられたロケットは全長9.54mと電信柱ほどの大きさで、HII-Aロケットはよりもずっと小さいものでした。
私は、ロケットが大きいほどロケットは複雑になり打ち上げも難しくなるように思っていたので、今回のロケット打ち上げは余裕で成功すると思っていました。
なぜ、今回の世界最小級ロケット(SS-520 4号機)は打ち上げに失敗したのでしょうか?
また打ち上げの目的は何だったのでしょうか?
世界最小級ロケット「SS-520 4号機」
打ち上げ失敗の原因
今回打ち上げられたSS-520 4号機は固体燃料使用する3段式ロケットでした。
JAXAのプレスリリースによると、“ロケットの第1段の飛行は正常に行われましたが、飛行中に期待からのテレメータが受信できなかったため、第2段モータの点火を中止しました” とあります。
テレメータとはロケットから送られてくる、ロケットに設置された様々な計測機器からデータのことで、これによってロケットが正常に飛行しているかどうかを判断することになります。
このテレメータが受信できなくなったとういうことは、少なくともロケットの通信系に異常が発生したことを意味します。
例え、通信系以外に何も異常が起きてないとしても、ロケットの詳細な状態が分からないため、最適な制御を行なうことができません。
通信系以外にも問題があれば、最悪の場合、制御不能となったロケットが人の住むエリアに落下し、大惨事となることもあり得ます。
このため、“第2段モータの点火を中止” し、安全な海上に落下させる措置を取ったのだと思われます。
なぜ、テレメータが受信できなくなったのかについては、まだJAXAからの発表はありません。
おそらく、落下したロケットを回収して、原因究明を行なってから発表されるものと予想されます。
打ち上げ失敗の原因[追記]
2月13日、JAXAは打ち上げ失敗の原因を、文部科学省で開かれた会議で公表しました。
公表によると、通信機器と電源をつなぐ電線が破損して、ショートした可能性が高いということです。
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SS-520 4号機の打ち上げ目的は?
SS-520 4号機の打ち上げは、“民生技術を用いてロケット・衛星の開発を行い、3kg程度の超小型衛星の打上げの実証を行う” のが目的でした。
これはJAXAによれば、“経済産業省 平成27年度宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業 (民生品を活用した宇宙機器の軌道上実証)の採択をうけて実施するものです” と説明されています。
“平成27年度宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(民生品を活用した宇宙機器の軌道上実証)” とは、簡単に言うと、ロケットや衛星の開発にコストの安い民生品や民生技術を利用していこう、というものです。
これまで宇宙開発というと、ロケットにしても人口衛星にしても、ほぼすべてのパーツが特注品として開発されています。あるいは外国から高額なパーツを購入しています。このために日本が作るロケットや衛星がとても高額なってしまっているのです。
宇宙開発における日本の国際的な競争力を増すためにはコストダウンは必須となります。
人工衛星の打ち上げにかかるコストを下げるため、民生品や民生技術をもっと積極的に利用していこうというのが、“平成27年度宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業(民生品を活用した宇宙機器の軌道上実証)” の目指すところとなっています。
今回の SS-520 4号機には、TRICOM-1(トリコム-ワン)という小さな衛星が搭載されていました。
大きさは、116mm x 116mm x 346mm (アンテナ部分を除く)で、ロールケーキよりも1~2回りくらい大きいサイズです。
この超小型衛星も、“民生品を活用した宇宙機器の軌道上実証” の採択を受けて、東京大学で開発されたものです。
JAXAによれば、“地球を周回しながら地上端末から送られるデータを収集(Store)し、衛星が管制局上空に来た時にコマンドにより地上局にデータを転送(Forward)するStore and Forwardミッションや、搭載したカメラを用いた地球撮像を行う予定” でした。
次回に期待します!
1月15日に打ち上げが失敗した、世界最小級ロケットについて、
- 打ち上げが失敗した理由
- 世界最小級ロケットの打ち上げ目的
についてご紹介しました。
電信柱ほどの小さなロケット(ちょっと大きなミサイル?)ですが、残念ながら失敗してしまいました。
日本の技術はこんなものではないですよね?
しっかりと原因究明を行い、次はぜひとも成功させて欲しいと思います。
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