2020年2月26日、NASAが出資するアリゾナ州立大学のカタリナ・サーベイの上級調査員カッパー・ビエルチョス(Kacper Wierzchos)氏が、地球の第2の月候補を見つけたとTwitterで発表しました。
地球の自然の(人工物でない)衛星と言えば、あの大きく明るい「月」ですよね。でも、ミニムーンってどんな衛星なんでしょうか。
第2のミニムーン(minimoon)候補である「2020 CD3」について、現在分かっていることなどをまとめてみました。
地球の第2のミニムーン「2020 CD3」
「2020 CD3」が発見されたのは2020年2月15日。発見者は、カタリナ・スカイサーベイの天文学者カッパー・ビエルチョス(Kacper Wierzchos)氏とテディ・プライン(Teddy Pruyne)氏です。
「2020 CD3」ってどんな天体?
ビエルチョス氏によると、大きさは直径が1.9〜3.5mほど、アルベドからタイプCと推測されています。
大きさは、大きくても小型のミニバンくらいでしょうか。「ミニムーン」と呼ばれてはいますが、「月」にくらべればゴミみたいサイズですね。「ミニミニミニ…ムーン」と言っても良いくらいです(^^;
アルベドとは、簡単に言うと、太陽の光をどのくらい反射するかを数値で表したもので、この数値からその天体の組成が推測できます。「2020 CD3」はタイプCということなので、炭素質の天体であると推測されているようです。
肉眼でも見える?
「2020 CD3」を目で(肉眼で)見てみたい! と思ってる人もいらっしゃるかもしれません。でも、それは残念ながら、まず無理です。
BIG NEWS (thread 1/3). Earth has a new temporarily captured object/Possible mini-moon called 2020 CD3. On the night of Feb. 15, my Catalina Sky Survey teammate Teddy Pruyne and I found a 20th magnitude object. Here are the discovery images. pic.twitter.com/zLkXyGAkZl
— Kacper Wierzchos (@WierzchosKacper) February 26, 2020
上は、ビエルチョス氏が「2020 CD3」の発見をTwitterで報告したときのものですが、明るさは20等級と書かれています。
この明るさの天体を肉眼で見る(眼視観測する)には、口径が約4.5mもの大望遠鏡が必要になる計算になります。こんなデッカイ望遠鏡を覗く機会は一般人にはまずないですよね。
写真撮影ならもっと小さな望遠鏡でも「2020 CD3」を“見る”ことが可能です。実際、カタリナ・スカイサーベイで使用されているのは口径69cmのシュミット望遠鏡です。
「2020 CD3」が空のどこに見えるのかを計算するための情報(軌道要素)もここで得ることはできますが、一般の人が計算を行い、そこに望遠鏡を向けて撮影を行うのはなかなか難しいでしょう。
画像など新しい情報は、やはり天文台や専門家からの発表を待ったほうが良さそうです。
地球の最初のミニムーンは?
「地球の第2のミニムーン」と発表があったと言うことは、最初の(第1の)ミニムーンがすでにあったことになりますが、それは今どうなっているのでしょう?
調べてみたら、最初のミニムーンはもう地球の周りを回っていないことが分かりました。
それは「2006 RH120」と呼ばれる天体で、やはりカタリナ・スカイサーベイによって発見されています。2006〜2007年にかけて約18か月の間地球の周りを回っていましたが、その後地球から離れていきました。
実はミニムーンと呼ばれる天体は、地球の重力に捉えられ地球を回るようになりますが、軌道がとても不安定なのです。しばらく地球を回ったあと、ふたたび太陽系内に飛び出していってしまいます。
ミニムーンが「一時捕獲天体(temporarily captured object)」とも呼ばれるのはこれが理由です。
では、第2のミニムーン「2020 CD3」もやがて地球から去っていくの? そうなんです。「2020 CD3」は、なんと今年の4月には地球から離れていくと予測されています。
Here's an animated GIF of our new mini-moon 2020 CD3, discovered by @WierzchosKacper. Rotating frame keeps the Earth/Sun line stationary. Orbital elements courtesy of IUA MPEC. https://t.co/dok3jn3G9hhttps://t.co/x1DXWLq2vm pic.twitter.com/O3eRaOIYjB
— Tony Dunn (@tony873004) February 26, 2020
このTweetは、アマチュア天文家のトニー・ダン(Tony Dunn)氏が計算した「2020 CD3」の軌道です。8〜9回ほど地球を周った後、飛び出していってしまうことが分かりますね。
じつは「2020 CD3」は、3年ほど前に地球に捉えられ、それが今年になってようやく発見された天体なのです。なかなか発見されない理由は、そのサイズがあまりにも小さいから。最初のミニムーン「2006 RH120」は、なんと1mにも満たないサイズだったと言われています。
発見したばかりなのに、再来月にはさよなら、なんてちょっと寂しいです。
「2020 CD3」はどこから来たの?
発見されてから間もないため、「2020 CD3」が地球に捉えられる前にどのような軌道を持っていたのかを決定するのに十分な情報がありません。
ひょっとしたら、2017年のオウムアムアや、2019年のボリソフ彗星のように恒星間天体である可能性もあります。
[clink url=”https://topiclouds.net/astronomy/comet-borisov-c2019q1/”]
「2020 CD3」自体についても情報が足りなく、実際には、現時点では“地球の「第2のミニムーン」候補”、という扱いになっており確定ではありません。
「2020 CD3」が去っていく4月までに、さまざまなことが分かると良いですね。
便乗した(?)こんなTwitterアカウント(@2020cd3)もできています。まっとうな情報もTweetしているみたいなので、ときどき覗いてみるのも良いかもしれません。
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