暑い時期でなくても、多くの観光客が梓川の河原や水辺で楽しんでいます。けれど、歩道を外れて河原に降りたり、川に入ったりする行為は、上高地の自然を守るためのルールから外れてしまいます。
本記事では、なぜ「川に入らない方がいい」のか、どのルールに関係するのか、そして現地で見かける水辺の行動をどう考えればよいのかを、やさしく整理してみました。
イヤな話しだと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、上高地を気持ちよく楽しむための大切な話です。興味のある方はお読みいただければと思います。
上高地で川に入らないで!

夏の暑い日、梓川の青く透き通った水はとても涼しげで、川の水に触れてみたい足を浸してみたいと思う方は多いのではないでしょうか。
でも、梓川で泳いだり、水に入って遊んだりすることはおすすめできません。上高地は水温が低く、流れも場所や天候によって変わりますし、環境保全の面からも控えるべき行為とされています。
また、川に近づくために遊歩道や木道を外れて河原へ降りることは、上高地の「踏み込まない」というルールに関わってきます。ここは「水がきれいだから入ってよいか」だけでなく、「そこへ行くために歩道外へ出ていないか」も考える必要があります
上高地の「5つのルール+2」
上高地は国立公園及び国の特別名勝・特別天然記念物に指定されており、その美しい自然を守り続けていくために「5つのルール+2」が決められています。
- 採らない
- 与えない
- 捨てない
- 持ち込まない
- 踏み込まない
- 乗り入れない
- 飛ばさない
詳しくは、一般財団法人 自然公園財団の「上高地 5つのルール+2」を参照してください。
川に入りたい、水辺まで近づきたいと思ったときに関係してくるのが、この中の「踏み込まない」です。
「踏み込まない」というのは、遊歩道や木道でないところに入り込んだり、歩いたりしないということです。水辺がすぐ近くに見えていても、そこへ行くために土手や草地、河原へ降りるなら、歩道外へ出ていることになります。
ただし、上高地にはキャンプ場や施設周辺など、現地の案内に従って利用する場所もあります。判断に迷うときは、「みんなが行っているから」ではなく、歩道・標識・ロープ・管理者の案内を優先してください。
どうして踏み込んじゃいけないの?
それは、上高地の美しい自然が壊れてしまうから、です。大げさに聞こえるかもしれませんが、人が歩く場所が少しずつ広がるだけでも、自然への影響は積み重なっていきます。2つほど例を上げて説明しますね。
蛇篭の役割

梓川の土手には蛇篭(じゃかご)というものが置かれているところがありますが、これは梓川の土手を守っているものです。もちろん、蛇篭の上は遊歩道の一部ではありません。
河童橋あたりの左岸にもありますので、知っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
蛇篭は、大きな石が針金でできた長い筒状のカゴの中に入ったもので、水の流れによって土手の土が削り取られてしまうのを防いでいるものです。
蛇篭の上に乗ることで梓川により近づいたり、蛇篭を階段代わりにして水面近くに降りたりすることができますが、このような行為は蛇篭の寿命を縮めてしまいます。
蛇篭に人が乗ることで、中の石の位置がずれたり、石が割れてしまってカゴから外に出てしまったりするのです。
大きく穴の空いた蛇篭はしっかり土手を守ることができず、増水したときなど水の流れの勢いが増したときに歩道がなくなるほど土が削られてしまうこともあるのです。
河原に出る道?
生い茂ってる植物を突っ切るようにして、川に近づいたり河原に出たりすると、踏まれることで植物が傷つきます。
上高地には、山地帯や亜高山帯の植物、湿原や水辺の植生など、さまざまな自然がまとまって残っています。こうした場所では、何度も人に踏まれることで植物が弱り、地面がむき出しになってしまうことがあります。
新たに植物が育たなければ、そこは地面が露出するようになり、小道のように見えるかもしれません。
小道のようになってしまうと、多くの人がそこを通るようになり、ますます植物は減り道は広がって行くことになります。
もとは高山植物が密に繁茂していた場所が、いつの間に植物がまばらにしか生えていない場所に変わってしまう、ということは意外なほど簡単に起きてしまうのです。
ルールに違反したら捕まるの?
上高地の「5つルール+2」の「踏み込まない」に「違反」したとしても、罰せられたり、逮捕されたりすることはありません。
これは、上高地を訪れる人に向けて、自然を守るためにマナーを守ってくださいというお願いとして示されているものです。
ただし、「お願いだから何をしても法律とは関係ない」という意味ではありません。上高地は国立公園であり、特別名勝・特別天然記念物でもあるため、行為の内容や場所によっては、自然公園法や文化財保護法などの規制に関わることがあります。
川に入るかどうかを考えるときも、「罰則があるかどうか」ではなく、危険を避けること、歩道外へ出ないこと、植物や護岸設備を傷めないことを考えてもらえれば、と思います。
美しい風景を未来に残すために(まとめ)
上高地に行けば分かるのですが、夏は梓川の河原に降りて水辺で過ごしている人を見かけることがあります。私が見たのは、河童橋より下流の河原、右岸側でした。小さなお子さんを水際で遊ばせている様子を見たこともあります。
おそらく、上高地の「5つルール+2」を知らないのでしょう。あるいは、みんながやっているから、ここは大丈夫なのだと思っているのかもしれません。
私自身、現地で梓川の河原に降りないようにという注意の看板を見た記憶はありません。ただ、最近は上高地に行っていないので、現在は状況が変わっている可能性もあります。だからこそ、現地では最新の案内をよく見て、歩道や木道から外れないことを基本にしてほしいと思います。
梓川は、眺めるだけでも十分に美しい川です。橋の上や遊歩道から見る透明な流れ、木々の間から見える水面、季節によって変わる山の景色は、それだけで上高地らしい魅力があります。
みんながルールを守っていかないと、上高地の美しさを守っていくことは難しくなります。川に入りたい、河原へ降りたいと思ったときほど、一度立ち止まって、そこが立ち入ってよい場所なのかを確認していただきたいものです。
