小惑星プシケ(16 Psyche)を地球に運んでくる計画をNASA(アメリカ航空宇宙局)が実行しようとしてる、というニュースを見てびっくりしてしまいました。
何でも、プシケはニッケル鉄でできており、資源としての価値は1000京ドル、日本円では10該円にものぼるとか…。
でも、ちょっと待ってください! NASAはそんな計画、立てていませんよ!
確かにNASAはプシケに探査機を飛ばす計画(プシケ計画)を立てていますが、目的はプシケの調査です。
・なぜ、NASAは探査機をプシケに送ろうとしているのか、
・なぜ、その計画がプシケを地球に運んでくる話しになってしまったのか、
今回は、このあたりについてお話したいと思います。
NASAのプシケ計画
NASAディスカバリー計画
NASAは、惑星科学部門による低コストな惑星ミッション「ディスカバリー・ミッション」というものを実施しています。
これまでにNASAは惑星ミッションとして次のようなミッションを実施しており、いくつかはあなたもその名前を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
- 水星を探査する「メッセンジャー(Messenger)」計画(2015終了)
- 小惑星ベスタと準惑星セレスを探査する「ドーン(Dawn)」計画(ミッション継続中)
- 太陽系外の惑星探査を行う「ケプラー(Kepler)」計画(ミッション継続中)
- 火星の地質調査を行う「インサイト(InSight)」計画(2018年に打上げ予定)
小惑星プシケに探査機を送る「プシケ(Psyche)」計画は、この惑星ミッションのうちのひとつなのです。
プシケ計画とは?
NASAはどうしてプシケに探査を送るのでしょうか?
実は、プシケには他の小惑星とは大きく異なる特徴があるのです。
それは、多くの小惑星が岩石からできているのに対して、プシケはそのほとんどがニッケル鉄(Nickel-Iron)でできている金属の塊である、ということなのです。
地球の中心部にも金属の塊(コア)があると考えられていますが、プシケは大昔に星どうしが衝突し周りの岩石部分が吹き飛び、コアのみがむき出しの状態で残ったモノではないか、と推測されているのです。
NASAは次のような科学的ゴールを設定し、プシケ計画を実施しようとしています。
- これまでに調査されたことのない、惑星形成における鉄のコアという構成要素の理解
- 他では見ることのできない、分離した内部(※むき出しになったコアのこと)を直接に調査することによる、地球を含む地球型惑星の内部の研究
- 新しいタイプの世界の探査。岩石や氷ではなく金属からなる世界の始めての調査
NASAが5月25日に発表した新しいプシケ計画では、探査機の打ち上げを1年早め、2022年の夏に探査機を打ち上げ、2026年にプシケに到着する予定だということです。
小惑星プシケってどんな星?
もう一度、小惑星プシケ(Psyche)についておさらいしておきましょう。
名前: Psyche(16 Psyche)
分類: 小惑星
直径: 253.16km
質量: 17,000,000,000,000,000 トン
絶対等級: 5.90
Psycheは、プシケ、あるいはプシュケと呼ばれます。「16 Psyche」という表記の「16」は小惑星番号で、16番目に発見された小惑星となります。
プシケは、1852年にアンニーバレ・デ・ガスパリスによって発見されました。この人は他にも、ヒギエア、パルテノペなど複数の小惑星を発見しています。
プシケの名前は、ギリシア神話の女神プシュケーに由来するものですが、なぜこの小惑星がプシケと名付けられたのかは不明です。
小惑星の中では13番目に大きく、火星と木星の間を周期5年で公転しています。
プシケは純度の高い鉄とニッケルからなる金属であると推定されています。
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NASAがプシケを地球まで運ぶ計画というウソ
このネタの出どころは、おそらくこのあたりではないかと思われます。
プシケの直径は約253kmで、その質量は1京7,000兆トンと推定されおり、もしプシケ全体が鉄の塊と仮定すると、これは地球で採掘可能な鉄の総量1,500億トンの11万倍以上の量となります。
つまり、プシケは地球11万個分以上の鉄資源、と言うことができます。
将来訪れるであろう地球の資源不足を解決する方法として、SFでは月や小惑星を利用する話しがよく出てきます。
NASAでプシケ計画を率いるリンディ・エルキンス-タントン(Lindy Elkins-Tanton)氏は、このようなことを念頭において、もしプシケを資源として利用するとしたら、という仮定の話をしているにすぎません。
NASAはプシケを地球に引っ張ってくる計画は持っていませんし、それが技術的に可能であっても実施しないでしょう。
なぜでしょうか?
それはコスト的に見合わないからです。
遠い将来は分かりませんが、比較的大きな小惑星を地球にまで引っ張ってくるには、高度な技術ととてつもないコストがかかります。
地球の資源不足が問題になったとき、最初に手を付ける天体はおそらく「月」です。月であれば、工場を建設し製錬した鉄を地球へ運ぶことは、小惑星帯で同じことを行うよりもずっとハードルは低いと言えます。
プシケ計画でどんな成果が得られるか
プシケ計画の探査機の打ち上げは、まだ5年も先です。
意外に、のんびりしているように感じますが、惑星探査にはそれだけ入念な準備が必要ということなのでしょう。
宇宙空間と言う厳しい環境を4年もかけてプシケまで飛行し、その後数年に渡って観測を続けるため、だと思えば納得できますね。
探査機がプシケに到着するのは2026年です。そのとき、どんな新しいことが知らされるのか、楽しみに待っていたいと思います。
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