現在、体外受精の主流となっている顕微授精ですが、ちょっとショッキングな調査結果が発表されました。
それは簡単に言ってしまうと、顕微授精で生まれた男子も不妊症となる可能性が高い、ということです。
本記事では、ベルギーの研究チームのこの発表について、不妊症となる理由は何か?対策はあるのか?についてご紹介します。
顕微授精で生まれた男子
顕微授精は1992年に始まり、近年その頃生まれた子どもたちが成人期を迎えています。
ベルギーの研究チームによると、顕微授精で生まれた男子は成長し大人になったとき、一般の男性よりも精子濃度が薄かったり、運動している精子の数が少なかったりする傾向がある、というのです。
ブリュッセル自由大学病院での研究
今回の成果を発表したブリュッセル自由大学病院は世界で初めて顕微授精での妊娠・出産に成功したところで、生まれた子どもたちを追跡調査しています。
今年2016年4月までの3年間、顕微授精で生まれた18~22歳の男性54人のデータと、自然妊娠で生まれた同世代の男性57人とを比較しました。
その結果、顕微授精で生まれた男性は、精子濃度や運動する精子数が全体として半分ほどしかなく、世界保健機構(WHO)が定める基準値を下回る人が通常の3~4倍にもなることが明らかになりました。
日本での取り組み
日本では、顕微授精による出産例が1994年に初めて報告され、最近は男性不妊に限らず受精率を高める目的でも顕微授精が広く実施されています。
日本産科婦人科学会によると、顕微授精は年間14万件以上実施されており、2014年までに計9万6,000人が誕生しています。
厚生労働省の研究班が子供の健康を調べているということですが、精子の状態は追跡調査されていません。
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生まれた男子も不妊症に?理由や対策は?
顕微授精は男性側の不妊症による自然妊娠の難しさを人工的な手段によって受精の確率を高めるものです。
つまり、男性側にはもともと、精子濃度が薄いとか不活発な精子の割合が多いという症状を抱えており、それが顕微授精によって子供にも伝わる、ということが今回明らかにされたわけです。
『顕微授精で男性不妊が次世代の男児に伝わる可能性は遺伝子の研究から予想されていたが、データで確かめられたことは極めて重要だ。』(日産婦元理事長 吉村泰典・慶応大学名誉教授)との指摘からも分かるように、これは遺伝の問題と考えられます。
そして男性不妊に関する遺伝子治療は残念ながらまだ確立されておらず、有効な対策はまだ存在しません。
通常であれば、自然妊娠は確率がずっと低いため、男性不妊の原因となる遺伝子を持った男子は誕生しないはずであるのを、顕微授精という人工的な手段により誕生させるということ。
『彼らが子どもをもてるかどうかが問われ、今後、顕微授精の実施時には十分な説明が求められる』(同教授)の指摘にもあるように、顕微授精による妊娠・出産を望む夫婦は、自分たちの子どもも不妊に悩む可能性があるということを十分に理解する必要があるということです。
まとめ
子どもが欲しいけれどなかなか授からず、顕微授精という手段によってようやく望みが叶う可能性が出てきました。
しかし、不妊の原因が男性側にある場合、生まれた子どもが男子なら、その子もまた不妊に悩む可能性があるという悲しい現実を突きつけられてしまいました。
自分たちが不妊にさんざん悩んできたのであれば、子どもにも同じような悩みを持たせるようなことはしたくない、と多くの夫婦は思うことでしょう。
「子どもが欲しい」という言う気持ちと、「子どもに同じ苦しみを味あわせたくない」という気持ち。
子どもを持つことを選択するか、生まれた子どものことを考えて、子どもを持つことをあきらめるか、とても難しい選択をしなければなりません。
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